勤務してた施設の話(5)

隔週ぐらいでクリニックに通院してたんですけど、夕方、職場から直接通ってたんです。直線距離だとわりと近いのに、地下鉄だと乗り換えがあって、けっこう時間かかってたんです。20分以上かかってて。それだったら、歩いて行ったほうがいいやって思って。歩いて行っても30分ぐらいだったんですよ。僕、歩くのが好きなんで、大雨の日とかじゃなければ、歩いて通ってたんです。

ある日、いつもの通院の時のように歩いてたら、線路の向こう側に、自分が勤めてる施設に通っている人が、歩いてるのが見えたんです。30代後半か40代初めぐらいで、中重度ぐらいの知的障害かな。とくに衝動的な行動をするって感じじゃなくて、いいおっちゃんっていう感じの人でした。で、歩いてるのが見えて、線路の向こう側だったし、わざわざ声をかけるほどでもないしと思って、見てるだけでね。フラっと散歩しながら、家に帰ってるって感じでしたね。家がだいたいどこらへんにあるのかは知ってて、家の方に向かって歩いてるのはわかったんでね。
それ見て、僕、なんかほっこりしたんですよ。施設だと、やっぱり職員と利用者って区分があって、まあ言ってしまえば職員の管理下にあるわけですからね。でも、そういうのがないところで、フラっと歩いてるのって、いいなって思ったんですよ。こういう時間、大事だよなって。

でも、何ヶ月か経った後に、彼が帰るときにはガイドヘルパーが付くってことになってね。寄り道しないようにって。なんだか、帰りが遅くなると親が心配するだとか、これまたお得意の、何かあると施設の管理責任が問われるからとか言ってましたね。
それ聞いて、あーあって思っちゃったんですよ。フラっと歩いて帰るのが、きっと彼にとって心地いい時間なのに、それを奪っちゃうなんて、って。可哀想っていうんじゃなくて、気の毒だなあって思いました。時間がかかろうと、自分で家まで帰れるんだから、ガイヘルなんて必要ないんですよ。ガイヘルっていっても、結局これじゃ、見張り役じゃないですか。これ、ガイヘルじゃないでしょ、って。

ガイヘルってことでいえば、日中は作業所で過ごして、同じ法人で雇ったガイヘルが付き添って、同じ法人のグループホームに帰るっていう人たちも多かったです。まさに「動く施設」って、こういうのを指して言うんだなあって、思ってました。

あと、いつも地下鉄で普通に一人で通ってる人なのに、突然ガイヘル付くようになったりってことが、ありました。本人が不安がってるから、ガイヘル付くほうが本人が安心がるんだとか、っていってね。確かに彼は、周りの状況に過敏なところがあって、精神的に不安定になりがちなところはあったんですけどね。でも、毎日ガイヘル付けるまでの必要は、ないような気がしたんですよ。なんか、エンパワメントの逆で、ディスエンパワメントだなって、思いました。

ガイヘル使える人は、使ったほうがいいみたいなことも、聞いた気がします。今考えると、経営面の都合も考えてたんじゃないかなと、思ったりしますね。ガイヘル付けたら、国から報酬が下りてきますから。ヘルパー事業所も、同じ法人の事業所でしたから。
もしそうだとしたら、ひどい話ですよね。もちろん不正請求ではなくて、むしろ合法的すぎるっていうね。施設の経営的な事情なのに、超合法的な手段を使って、利用者に過剰にサービス利用させちゃうって、言語道断って思います。
前も書きましたけど、社会福祉法人でも営利法人でも、そんなの違いがないなと。営利法人は利益追求で、社会福祉法人はそうではないっていうの、社会福祉法人格を持ってる人たちが吹聴してますからね。既得権益って、思ってます。

勤務してた施設の話は、ひとまずこれで終わりです。