団地の住人たちの話:2018/01

昨年の4月、町内会の組長の番が回ってきた。
町内会の「組」というのは、第二次大戦中に作られた「隣組」が発祥らしい。大政翼賛会の末端組織という位置づけだったそうな。
だから、相互監視みたいな役割は、きっとあったのだろう。でも、それと同時に、自分たちでできることは自分たちでやれという、いわば互助のために作られた組織でもあったようだ。

そういう意味でいえば、団地の「組」というのは、今でもまさしく互助組織に近いと思う。それは、公営住宅であればなおさらのこと。
管理事務所はいちおうあるが、何もやってくれない。引っ越してきた日、水道の元栓の開け方がわからないと聞きに行ったら、隣の人に聞けと言われてしまった。
思えば、共益費というのを徴収されていないし、何より家賃がものすごく安い。そのぶん「共益」も自分たちで作って生活するのが、公営住宅に住むということなのか。と、このとき悟った。

住み始めたころ、5階に住んでるおっちゃんに、向こう5年は組長の番は回ってこないから大丈夫だと言われた。なのに、2年で回ってきてしまった。
うちの組は10軒あるうち、2軒が空き家。さらに、1階と2階の人はご高齢で身体が悪いので免除になり、早くも順番が回ってきたという次第。

組長がやらなければいけないことは、
・1ヶ月に1回、町内会の定例会に参加する。
・定例会で配られるチラシ類を、回覧板で回す。
・3ヶ月に1回、町内会費を集めて、会計の人に届ける。
・2ヶ月に1回、朝8時から始まる大掃除の前に、掃除用具を倉庫から持ってくる。
・大掃除に参加しない人から、罰金を徴収する。
・組費を管理する。
・赤い羽根や赤十字の募金を集める。
・夏祭りのとき、準備か片付けどちらかに参加する。
・防災訓練に参加する。
・交通事故ゼロの日の朝、通学路で見守りをする。

といったところ(だけど、最後の2つはサボりました。ごめんなさい)。
会合や行事に参加しなければいけないし、お金関係のことも面倒といえば面倒。だけど、やってみたら意外と「こんなものか」と思った。
たとえば町内会費は、それぞれの家の郵便受けに「◯◯日まで◯◯円を、うちのドアポストに入れておいてください」という紙を入れておけば、みんなキチンと払ってくれる。

定例会も、時にはかなり面白い。
公営住宅は高齢化率がハンパなく、ゆえに定例会の参加者もご高齢の方が多い。
町内会長も、もう70歳代半ばだと思うが、とてもパワフル。
けれど、これ何時からですかーと質問が出ると、えーとこれは5時から…、いやそれ別の日だわ、8時っからかななどと言うものだから、みんな「??」ってなる。質問が飛び交う。

大事なことだから、皆さん静かに聞いてって言ってるのに、耳が遠い人には伝わらないものだから、喋り声が余計に大きくなる。さらに質問が飛び交う。
同時にいろんな話が入り混じって、もうごっちゃごちゃな状態。これはカオスだ。

これまで20年以上、ひとり暮らしをしてきた。近所づきあいなどとは、無縁で過ごしてきた。
でも今、いろんな人がとなり近所に住んでいる状態が、面白くもあり面倒だ。