埼玉県議会 平成15(2003)年2月定例会 議事録抜粋(「二重学籍」関係質問)

※2003/01/07 04:05 共同通信

埼玉知事が二重学籍に意欲 「国反対でも実現を」

http://www.47news.jp/CN/200301/CN2003010701000129.html(リンク切れ)


 障害のある児童らが盲、ろう、養護学校に加えて普通学級にも籍を置く「二重学籍」導入を検討している埼玉県の土屋義彦知事は7日の年頭記者会見で「相当困難を要すると思うが、仮に文部科学省が反対しても実現したい。自分の身内に(障害のある子どもが)いたらどう思うか。政治は相手の立場に立って考えないといけない」と述べ、実現に強い意欲を示した。
 県の構想では、障害がある児童らも普通学級で健常児と一緒に過ごして互いに個性の尊重を学び、専門教育が望ましい授業では養護学校などに通学する。実現すれば全国初の制度となる。
 同席した青木信之副知事は「(二重学籍は)制度上想定されていないが、国の理解を得たい。施設整備や教員配置などの課題について検討委員会を設置し検討を進める」とした。

2003年2月24日

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◆八十四番(深井明議員)
 八十四番、自由民主党議員団の深井明でございます。自由民主党議員団を代表いたしまして、土屋県政が当面する主要課題について、順次質問をいたします。
…(中略)…
 知事は今年の年頭の記者会見において、障害のある子供と障害のない子供が一緒に学ぶことを実現をするという強い意向を示されました。障害の有無にかかわらず、同じように社会活動に参加をし、誰もが自立をして生活のできる社会を目指すというノーマライゼーションの理念に基づく施策であります。私は、全国知事会の会長である土屋知事が、他県に先駆け学校教育でこの理念を実現しようという考えを示されたことは画期的なことであり、日本の将来のためにも大変意義のあることと考えております。
 本県には、県立の盲・ろう・養護学校が三十校設置され、現在四千二百名ほどの幼児、児童、生徒が在籍をしております。それぞれの学校で特色を生かした教育が展開されていますが、在籍する子供たちは、地域や通常の小中学校とのかかわりが薄く、同世代の様々な子供たちとの交流の機会が少ないことが以前から指摘をされておりました。
 国の障害者施策推進本部から、昨年十二月に今後の障害者基本計画が示されました。その冒頭に、「二十一世紀に我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し合う、共生社会とする必要がある」と記されております。障害のある子供が、可能な限り様々な機会を通して地域社会の中で共に生きていく力をはぐくむことは、大変重要なことだと考えております。障害のある子供とない子供が一緒に学ぶという知事のお考えを実現するには、関係者の意識改革や財政的な負担が必要と思われますが、知事のお考えをお伺いいたします。
 また、障害のある子供とない子供が一緒に学ぶという教育を推進するに当たっては、文部科学省や市町村、そして学校現場などいろいろな意見を取り入れながら具体化する必要があります。多くの困難が予想されますが、今後どのように進めていくのか、教育長にお伺いいたします。
…(以下略)

◎土屋義彦知事
(略)…
 また、障害のある子供とない子供が一緒に学ぶことを実現することについてでございますが、私は平成七年にインドの首都ニューデリー郊外にあるアマルジョティという障害者の施設を訪問した際、障害のある子供とない子供とが共に学び、共に遊ぶ姿を目の当たりにいたしまして、本当に感動いたしました。これこそ、まさしくバリアフリーであり、こうした教育を全国に先駆けて実現したいと考え、帰ってきて早速、当時の厚生省に話をいたしました。厚生省は賛成してくれましたが、文部省の理解が得られなかったようなわけでございます。
 私は、インドにおける感動を県内の関係者にも理解をしてほしいと考え、翌平成八年十月にアマルジョティの施設長であるウマ・トゥーリ博士御夫妻を埼玉県にお招きいたしまして、教育関係者に対しまして直に博士のお考えをお示しいただく機会を設けました。二十一世紀を担う子供たちが、障害のあるなしにかかわらず、共に学ぶことによりましてお互いの存在を認め合うことは、障害のない子供たちに、心豊かで思いやりのある心を育てるとともに、障害のある人たちを地域全体で支え合う福祉社会づくり、ひいては世界の平和の実現にもつながるものと確信をいたしております。
 この施策について、年頭の記者会見において発表いたしましたところ、実現を期待する励ましや支援の大きな声が県内外から、いや全国からも寄せられました。私は、その反響の大きさに驚くと同時に、改めてこの施策の重要性を再認識をいたしたところであります。何といっても重要なことは、教育現場のみならず、社会全体の意識改革であります。障害があろうとなかろうと、相互に人格を尊重し合うことが今ほど重要なときはありません。障害のある子供をよその子と思わず、うちの子、自分の友達と意識するような、子供のころから心のバリアを持たない教育、社会づくりが大切でございます。そして多くの方々に、自分の子供に障害があったとしたらという視点に立って考えていただきたいのであります。
 もちろん、この実現には大きな困難が伴います。しかしながら、私の政治信条として何とかして実現したいという思いが更に強まっております。教育委員会における具体的な検討を踏まえながら、実現に向けた取組を一歩一歩進めてまいりたいと考えております。
…(以下略)

◎稲葉喜徳教育長
 御質問四、県民福祉の向上についての(三)障害者への施策についてのうち、私に対する御質問にお答えを申し上げます。
 まず、障害のある子供とない子供が一緒に学ぶことについてでございますが、子供たちが共に育ち共に学ぶというノーマライゼーションの理念を実現するためには、御指摘のとおり多くの困難が予想されるところでございます。現在、教育局内に検討会を設置し、児童生徒の学籍や教員定数、施設設備の整備、介助員の雇用、市町村との費用負担など、想定される課題の整理作業を精力的に進めております。平成十五年度にはこれを基に、学識経験者や市町村関係者等からなる特殊教育振興協議会の場におきまして、ノーマライゼーションの理念に基づく教育の在り方について協議をお願いすることとしております。
 先ほど知事から御答弁申し上げましたように、障害のあるなしにかかわらず、相互に人格を尊重し合うことが極めて重要なことと存じますので、教育委員会といたしましては、関係部局や市町村教育委員会と緊密な連携を図りまして、ノーマライゼーションの理念に基づいた教育の推進に鋭意取り組んでまいります。
…(以下略)

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2003年2月25日

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◆九十二番(秦哲美議員)
 九十二番、歩みの会・民主議員団の秦哲美であります。私は、歩みの会・民主議員団を代表して、県政全般について質問いたします。
…(中略)…
 次に、障害のある児童生徒の二重学籍問題について質問します。
 知事は、養護学校に通う障害のある児童生徒が普通学級にも籍を置いて、障害のない子供と共に過ごせる二重学籍といいますか、部分的な統合教育を提唱し、全国的な反響を呼んでいます。共に育ち、共に学ぶというノーマライゼーションを積極的に実行するものとして高く評価しています。
 障害のある児童生徒が全員普通学級に籍を置く統合教育は、障害のある児童生徒にとっても、保護者にとっても長年の願いでありますが、知事の強い思いによって実現の方向にあることは大きな福音だと思います。知事の英断とも言える二重学籍構想を実現するには、理念だけでは解決できない制度上の困難性もありますので、様々なうよ曲折があるかと思いますが、知事は強い信念で提唱されておりますので、必ず実現するものと期待しています。歩みの会・民主議員団は、知事の姿勢を高く評価し、積極的に応援してまいります。今後の実現を図る基本的な考え方を知事に、具体的な課題について教育長にお伺いします。
…(以下略)

◎土屋義彦知事
(略)…
 次に、御質問第三の障害のある児童生徒の二重学籍問題についてのお尋ねでございますが、ただ今、秦議員から、高く評価し、積極的に応援してくださるとのお言葉をいただき、大変ありがたく思っております。
 私は、平成七年にインドの首都ニューデリー郊外にあるアマルジョティという障害者の施設を訪問した際に、障害のある子供とない子供が共に学び、共に遊ぶ姿を目の当たりにいたしまして、本当に感動いたしました。これこそがまさしくバリアフリーであり、こうした教育を全国に先駆けて実現したいと考え続けてまいりました。障害のある人を遠ざけていては、いつまでたっても障害のある人の気持ちは分かりません。また、障害のある人にとっても、社会の中で他の人と同様に過ごせるという自信を持っていただくことは大変重要であります。
 何と申しましても重要なことは、障害のある人を違う人、特別な人と思わないような環境づくり、小さいときから人間は誰もが平等という意識をできるような教育が大切なのです。障害のある子供とない子供が共に学べるようにすべきというのは私の確固たる信念でありますが、その実現には、まずもって社会全体の意識改革が必要であり、大きな困難が伴います。しかしながら、愛する郷土埼玉とその子供たちの将来のために何とかしても実現したいと考えております。教育委員会における具体的な検討を踏まえながら、実現に向けて一歩一歩取り組んでまいります。
…(以下略)

◎稲葉喜徳教育長
(略)…
 次に、御質問三、障害のある児童生徒の二重学籍問題についてのうち、私に対する御質問でございますが、子供たちが共に育ち、共に学ぶというノーマライゼーションの理念を実現するためには、多くの課題が予想されるところでございます。具体的には、障害のある児童生徒が養護学校と通常の学級に籍を置いた場合、教員定数はどうなるのか、介助員や施設設備の整備はどの程度必要となるのか、県と市町村との費用負担はどうするのか、さらに教員の意識をどう高めていくかなど様々な課題が想定されます。
 県といたしましては、こうした課題について、平成十五年度に学識経験者等で構成される特殊教育振興協議会において御協議いただくとともに、市町村教育委員会とも十分な連携を図り、鋭意検討してまいります。
…(以下略)

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2003年2月27日

http://www.kaigiroku.net/kensaku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?A=frameNittei&USR=saisaik&PWD=&XM=000000000000000&L=1&S=15&Y=%95%bd%90%ac15%94%4e&B=-1&T=-1&T0=-1&O=-1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=209&N=21741&W1=&W2=&W3=&W4=&DU=1&WDT=1

◆四十四番(渡辺千代子議員)
 おはようございます。四十四番、歩みの会・民主の渡辺千代子でございます。議長の許可をいただきましたので、通告の順に従いまして御質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速始めさせていただきます。
 まず初めに、障害児教育の推進についてお伺いいたします。
 知事は、平成十五年の年頭記者会見におきまして、障害のある子供とそうでない子供が一緒に学ぶことを実現するという強い意向を示されました。共に生き、生かされ合う共生の社会実現を基本に据えて、これまで活動してまいりました私は、このニュースに触れまして、胸が熱くなるほどの感動を覚えました。この世に生を受けた命はすべて役目を担っています。自分の命が大切であるように、それぞれ一人一人の命はかけがえのないものです。そして、その命に光を当てるのが政治に携わる者の責任だと私は認識をしております。
 共生の社会の構築は、共に育ち合い、共に学び合うことが実現の第一歩と考えます。保育園や幼稚園では一緒に遊べたのに一緒の学校へ行けない。一緒の学校へ行きたい、一緒に学ばせたいという親子の思い、嘆きを何度も共有してまいりました。心の教育が強く求められていますが、一緒に学び合うことから得るものは計り知れないものがあります。障害も個性の一つです。それぞれの個性を認め合い、共に支え合って生きる社会、ノーマライゼーションの理念の推進には、教育が最も重要であると考えます。
 知事の今般の教育におけるノーマライゼーションの実現の御決意は、まさに一条の光となって、県民は生きる勇気と希望をいだきました。全国に先駆けて埼玉に春が来る「教育立県埼玉」だと、思わず仲間と手を取り合ったものです。知事の御英断に対しまして心から敬意を述べさせていただきますとともに、積極的な施策の推進を期待をするものです。
 そこで知事にお伺いいたしますが、障害のある子供たちの学ぶべき環境はどうあるべきだとお考えでしょうか。二重学籍を認めても実現させたいという知事の障害児教育に対する御所見、御決意をお伺いいたします。
 さらに、教育長にお伺いいたします。
 現在、教育現場では、いじめ、体罰、不登校、さらには路上生活者に対する暴行やひったくり事件など様々な問題を抱え、心を育てる教育が求められています。私は、ノーマライゼーションの教育こそ、心の育成にとって最も重要な施策だと確信をしておりますが、教育長はどのようにお考えでしょうか。御所見をお伺いいたします。
…(以下略)

◎土屋義彦知事
 渡辺千代子議員の私に対する障害児教育の推進についての御質問にお答えを申し上げます。
…(中略)…
 私はしばしば御答弁を申し上げておりますが、平成七年にインドの首都ニューデリー郊外にあるアマルジョティという障害者の施設を訪問いたしました際、障害のある子供とない子供とが共に学び、共に遊ぶ姿を目の当たりにいたしまして、これがまさしく本当のバリアフリーである、大変私は感動いたしました。
 障害のある子供とない子供が共に学ぶことによって、互いの気持ちを分かり合うことができる。また、障害のある子供にとってもですね、社会の中で他の子供と同様に過ごせるという自信を持つことができる。何とか埼玉県でもこうした教育を実現できないのかと考え続けてまいりました。
 私がこの考え方を発表しましたところが、全国的に大きな反響がございました。教育におけるノーマライゼーションの在り方についての研究で御高名な東京学芸大学の名誉教授でございます山口薫先生は、わざわざ知事公館までお出ましをいただきまして、山口先生は、小中学校等の教師や子供たち、保護者が、障害のある子供に対して、「よその家の子供が学校に来たというのではなく、うちの子が戻ってきた」という意識を持てるように変えていくことが大切であるとお話をしてくださいました。
 障害のある子供の学ぶ環境として何よりも大切なことは、障害のない子にとっても同じ仲間であるといつも思える環境ではないでしょうか。私が二重学籍にこだわっているのは、普段は養護学校に通学している子供も普通学校の学籍を持ち、何かのときには共に過ごすことができ得れば、同じ仲間であるという意識でできるからでございます。もちろんできることなら、すべての授業を通してですね、共に学ぶことができれば一番良いと私は思っております。そうした検討も進めてほしいと思っておりますが、それが現段階で難しいならば、まずは例えば入学式、学習発表会、運動会や遠足といった学校行事などに少しでも同じ仲間としてですね、過ごせるような環境をつくりたいのでございます。私の目には、障害のある子供とない子供が手をつなぎ、助け合いながら桜の下を入学式会場に向かう情景が浮かんでくるのであります。
 このことの実現にはですね、大きな困難が伴うものと思われます。しかしながら、社会全体の意識の変革を図り、心のバリアを取り払いながら、互いの人格を認め合えるような社会をつくっていくことは、私の確固たる信念であります。渡辺議員からは、私の決意がまさに一条の光であるとの評価をちょうだいいたしましたが、将来この一条の光が彩り豊かな光となり、彩の国の教育を光輝かせてくれるように、障害のある子供もない子供も共に育ち、共に学び合う教育が実現でき得るよう、議員の皆様方の御理解、御協力、御支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。(拍手起こる)

◎稲葉喜徳教育長
 御質問一、障害児教育の推進についてのうち、私に対する御質問にお答えを申し上げます。
 現在、県におきましては、すべての養護学校において、近隣の二ないし三校程度の小中学校や高等学校との間で交流教育を実施いたしております。この交流教育を体験した児童生徒からは、障害のある子供たちが一生懸命に運動や学習に取り組む姿を見て、「自分も頑張らなければいけないと感じた」、「まちの中で障害のある人に会ったら、お手伝いできることはないかと声をかけるようにしたい」。また、指導に当たった教員からは、「クラスの子供たちが互いの良さを認め合うようになり、明るい雰囲気の学級になった」、「休日に進んでボランティア活動に取り組む生徒が増えた」といった感想が多く寄せられておりまして、養護学校と通常の学級の児童生徒が共に過ごすことが児童生徒の人間形成の上で大きな成果を上げていることが実証されております。
 一方、お話にございましたように、現在の教育現場では、いじめ、不登校、さらには暴力行為やひったくり事件などが依然として後を絶たず、昨年は、県立高校の生徒や熊谷市の中学生による悲惨な事件が発生するなど、子供たちの心の問題が危ぐされる状況にございます。
 今日こうした子供たちの置かれている状況を考えますと、これまでの交流教育の成果を踏まえ、さらに障害のある子とない子とが共に育ち、共に学ぶノーマライゼーションの理念に基づいた教育を目指すことは、心の育成を図る上で大変重要であると存じます。実現を図りますためには多くの課題がございますが、今後、鋭意取り組んでまいります。